平成手記

平成の世を生きる者が書いたと言われている書物

未熟DREAMERは加筆されている。

またまた失礼します。

さて今回は「未熟DREAMER」という楽曲に焦点をあてて語っていきたいと思います。

まず当楽曲はラブライブ!サンシャイン!!TVアニメ1曲9話にて3年生が千歌達の現行Aqoursに加入した後に披露され、先代Aqoursのダイヤ、果南、鞠莉が1年生時に作っていた曲で、センターは松浦果南が担当。花火大会に向け楽曲制作が進んでいたが、鞠莉の留学による仲違いで初代Aqoursが解散してしまい、制作途中で放棄されていた。しかしながら、部室のホワイトボードには歌詞の一部が残っており、第4話では千歌が気づく描写がある。Aqoursが9人となった後、現在のメンバーの手で完成され、花火大会のステージで披露された。ステージでは、3年生が一人ずつ、かつての衣装から新衣装に変化するソロパートが取り入れられている。(出典:Wikipedia)

Wikipediaからの出典なのでここでの「楽曲制作が進んでいたが」「途中で放棄され」「現在のメンバーの手で完成された。」はアニメ内では言及されていない。アニメ内の描写で存在するのは1期4話にて千歌達が見つけた部室のホワイトボードに薄く残っていた歌詞のみである。1期9話の作詞途中に伺える果南は終わりにしようと言っているが根拠としては薄い。故に「途中で放棄された」可能性だけでなく完成されていた可能性も拭いきれない。

そこでここでは、この楽曲が後に現行Aqoursによって加筆され完成されたという根拠を挙げていきたいと思う。

まずはホワイトボードに書かれていた文字を読み取る。
1期4話に書かれていた部分はホワイトボードの位置から9話でも同じ箇所が回想にて描写されているのでそちらから読み取ると、「そう言葉すら足りない 故に」「悲しかったの」「きっと傷つけたね」「今は隠さないから」「泳いでいこうよ」「でも楽しくなるはずだよ」「これからなんだね」「でも楽しくしたい」である。アニメの挿入歌としてはAメロしか流れないので全てAメロにある歌詞で統一されているのは納得出来る。

ここで注目するのは「ホワイトボードに果南(と曜と千歌)のパートに含まれる歌詞がない」ことである。未熟DREAMERのAメロは3年生1人と他2人で構成されるパート分けで3年生が1人ずつ想いを乗せて歌っているのが特徴的である。ダイヤパートは「言葉じゃ足りない 言葉すら足りない」と歌っているように言葉が足りなかった自分のせいで「すれ違って」しまったことを悔いている、鞠莉のパートは「キモチ」によって「傷つけたね」と言うようにキモチがぶつかって相手(果南)を傷つけたことによる後悔を歌っている。2人とも現時点での心境を歌っているため「過去に完成されていた」としたらかなりメタすぎるとは思うが、これは後から完成されたと結論づけるには果南パートに着目したい。
「いつもそばにいても 伝えきれない思い」を「忘れてしまおう 歌ってみよう」と言い切れるのは現在の松浦果南だからこそだ。過去の鞠莉への態度や「鞠莉の進路のため」と決めた決断を忘れられずに3年生まで進級してきた果南にとってそういった過去を脱ぎ捨てられるのは1年生の果南にとっては難しいだろう。(そういった経験があるのかは別として)つまり、果南の歌詞は元々予定されていた歌詞に存在しないのだ。この歌詞は3年生になった果南の心境といえるだろう。

次に同じAメロの歌詞から3年生の「力を合わせて 夢の海を 泳いでいこうよ」と千歌の「今日の海を」に着目する。
「CONTINUE vol.58」で楽曲レビューにてこの歌詞が3年生と千歌のこの先の関係性を示唆していることや、「果南とダイヤは、再びスクールアイドルとしてステージに立つなんて夢にも思わなかっただろう。けれど有り得ないはずのことが現実になってしまった。……9人の未来には無限の可能性が広がっているのだ。」と書かれている。

この3年生パートに関しては先述の通りホワイトボードにもあった歌詞で初代Aqoursがスクールアイドルという大海原を3人で泳いでいくという決意も込められていただろう。しかし現行Aqoursでそのリーダー高海千歌が「今日の海を」と呼応することでその3年生パートが3人の決意だけでなく、その3年生達が現行Aqoursに迎合する意志を表したとも捉えられる。そして千歌パートは決して受け入れる意志などはなく、その3年生の決意を後押しする形に見受けられる。高海千歌らしいスタンスで書かれていると考えると、これも後から加えられた歌詞らしい気がする。

そしてBメロも見ていきたい。Bメロはアニメ内では流れず、歌詞が直接アニメの内容に関与する訳では無いことが多いが、この楽曲においては短くも必要だと考える。
サビ前は1番のサビに続くように3年生が「やっとひとつになれそうな僕達だから」と、3年生以外の6人が「本音ぶつけ合うことから始めよう」という歌詞の後に全員で「その時見える光があるはずさ」と歌っているのと、サビ前に「このまま一緒に 夢の海を泳いで行こうよ」と全員で歌って千歌が「今日の海を」と歌うシンプルだがAメロと全く違うものである。
3年生が仲直りをしたような歌詞と他6人が後押しするような歌詞、そして光すなわちラブライブ!サンシャイン!!のTVアニメで度々あがる「輝き」が見えると歌っている。これは3人が再び力を合わせることによってかつての夢を実現することや、先述のCONTINUEのレビューでも語られているように「9人の未来には無限の可能性が広がっている」ということだろう。当然、3年生時点でないと書けない歌詞である。

最後に、これは3年生に焦点がいきがちとなる当楽曲だが「1,2年生にとっても分岐点となった楽曲」なのである。
TVアニメで披露されたのは1期9話だが、その前の7話ではSaint Snowと邂逅し、8話で0票という実力不足という現実に直面した。それが2番サビの「嵐」である。嵐が来たとしても8話では6人で乗り越えようとしていて、それが2番サビに込められているのだろう。更に9人になったAqoursは誰も「ひとりじゃない」ので「助けあえばいい」という安心感もある。ここに過去の呪縛を振り払い新しく見参したスクールアイドル「Aqours」ありとも言わんばかりの意味が込められていると考える。

未熟DREAMERは勿論初代Aqoursが一年次に歌詞をあげているが、これらの理由から現在のAqoursが加筆して完成させたと考えられ、意味合いとしても3年生3人の楽曲から「3年生も1,2年生も過去の呪縛を振り払って互いが力を合わせることによって、新しい輝きへと手を伸ばそうとする」まさにTVアニメ版のAqoursにおける「始まりの歌」なのである。
ただ3年生の想いが加筆されているだけでなく、この9人で未来を手に入れようとする素晴らしい楽曲だと思う。